ちょっぴりおっちょこちょいだけど、優しい母。私にはそんな印象の母である。
 我が家では家族の誕生日やクリスマス、両親の結婚記念日などイベントがあると必ず「お祝い会」を催し、プレゼントにはカードをつけて渡していた。お小遣いの中から、お父さんにはこれ、お母さんにはこれ…と色々考えて選ぶのが結構楽しかったりしたものだ。
 その日は妹の誕生日だった。プレゼントを買いたかったのだがお小遣いを使ってしまい財布は空っぽだった。
「どうしよう…」
プレゼントを渡したかった私は、悪いと思いながらも母のお財布から400円頂戴してしまった。100円玉4枚をお財布に入れ、歩いて10分くらいのショッビングセンターに向った。一軒の手芸やさんで、小さなビンの中にピンクのお花が入っている(昔はどうやってあんなにちっちゃい入口から花を入れたのか不思議だった)アートフラワーなる物を購入した。
買い物を終え家に帰っても、プレゼントを購入した満足感よりも母に怒られるだろうという罪悪感が消えなかった。
どのくらい時間が経ったのだろう。母が帰ってくるまでの数時間がものすごく長く感じられた。その日の夕方、仕事から帰って来た母は案の定、お財布の中身が減っている事に気づいた。私は母に
「妹のプレゼントを買うために取った」事を告白すると、母はじっと私の話しを聞いた後にこう言ったのだ。
「あら、そうなの…」
怒るわけでもなく、責めるわけでもなく。
でも、とても悲しそうな顔をしていた。
夕暮れ時の薄暗い部屋の中で、夕日に映された母の横顔は、今でもはっきり覚えている。
私はすごく反省した。
人の財布から黙って取ってしまった罪悪感。もう二度としてはいけないと思った。
もう20年以上前のあの時、母の取った行動は私が子育てをしていて迷った時、思い出すのだ。
子供を叱る事はもちろん大切な事だ。
でも、子供に考えさせるという事が怒るよりもっと心に響く事もある。
そんな話しを母にすると、「へ〜。そんなことあったかしら?」
ちっぴりおちゃめな母は今も健在である。