あれは私が20歳そこそこの頃、合コンで知り合った男の子2人と女の子2人の4人でテニスをした時のことである。当時グループ交際の始まりといえば、春はテニス、冬はスキーが定番であった。

 私達はしばらくテニスを楽しみ、喉が乾いたのでそろそろ休憩しようということになった。男の子の一人が飲み物を買ってくると言い、私達も当然同意した。ところが男の子が戻ってきた時、手に持っていたのは自分用の1本の缶コーヒーだった。「あれれ?」第1回目の「あれ?」だった。

 2時間ほどテニスをし、空腹になった私達はお昼を食べようという事になった。忘れもしないハングリータイガーに行った時のことだ。その日の感想を互いに話し、和気あいあいとした雰囲気で食事は終わった。1人の男の子がまとめて会計し、私達に言ったのだ。
「えっと、1人 1,562円 ね。」
その人は1円単位できっちり割った金額を請求したのであった。
「あれれ?」
私の第2回目の「あれ?」と共に、ほのかに抱いていた今後の期待は一気に吹っ飛んだ。2度と彼らと会わなかったのは言うまでもない。

 お金の感覚というのは結構大切だと思う。言っておくが、私は男性が全部支払うべきだと言っているのではない。相手がスマートなお金の出し方が出来るかどうか、その感覚がなるべくなら近い人の方がいいということである。

 数年後ある男の人と知り合った。割り勘にしても嫌みがなく非常に感覚の似た人であった。今のダンナである。そのダンナと新婚旅行で海外に行った時のことだ。私達が宿泊したホテルは空港から車で1時間ほど走った場所にあり、観光地にありがちな賑やかさはなく、海と自然に囲まれ落着いた雰囲気のホテルであった。 近くにレストランがあまり無いのでホテルから少し離れたレストランに行くことにした。
「May I help you?」
注文を聞いてきたボーイはなんと昼間私達が参加したクルージング舟・クイックシルバー号で大活躍だった添乗員「ダレン」であった。ある時は潜水艦の説明員、またある時はシュノーケリングの講師、そして夜はレストランのボーイ、なんて働き者なんだろう!!私達がダレンを知っていると言うと彼はとても驚き、話も弾んだ。そのレストランはシーフードのお店でどれも美味しく、私達は大満足だった。

 気分をよくした私達はタクシーで帰ろうということになった。しばらくして到着したタクシーはオフホワイトの豪華なリムジンで、ちょっとしたカラオケルームほどの広さがあり、座席は上品なベージュの皮で覆われていた。映画の主人公のような気分になったのは私よりダンナだったのだろう。それほど走ることもなくホテルに到着した。たしか4ドルぐらいだったと思う。するとダンナは、何やらポケットの中をごそごそ探し始め、手に余るほど山盛りの小銭を運転手に渡したのだ。
「これはチップですか?No Noこんなにもらえません…」
困惑した運転手の手をさらに強く握り締め、
「OK OK プリーズ プリーズ!!」
と満面の笑みを残して降り去ったのである。総額10ドル以上はあったであろう。
運賃よりも多いチップを気前良く渡してしまうダンナ。ケチよりいいか。

今でも忘れられない思い出である。